バックミラー投資家の罪

7月に株は買うな? 投資理論では説明がつかない経験則 JBpress(日本ビジネスプレス)
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/1328


ちょ、コーヒー吹いたよ。勘弁して下さいよ。


我々はいつだって、「理論では説明がつかない」ことが大好きだ。そもそも理論を振りかざすのは、大体においてイヤミな連中だし、我慢して聞いた長いストーリーの結論は大抵、「だから君も家を買え」くらいの、押しつけがましくて耐えられないものばかりだ。理論に素敵な思いをさせてもらった記憶などないし、数学の試験には苦労させられた記憶しかない。そんな「理論」が無力だってんだから、それが痛快でないはずがない。


そして、そこにはロマンがある。あれだけ偉そうな「理論」でさえ説明がつかない、誰も踏み入れていない素敵な楽園が、そこかしこに広がっていて、そのことはきっと幸福をもたらす。いや、もたらさなかったとしても、理論では説明のつかないことの存在は少なくとも、「お前なんかに俺の気持ちがわかってたまるか」という世間への漠然とした絶望の、理論的支柱となっているのだ。何を書いてるのかわからなくなってきた。


とはいえ人間の好奇心と執念は無限大だ。何千年もの間「どうしてだ?」と考え続けてきて、いまでは到底ひとりの人生では、そのすべてを追い切れなくなってしまった程の我々の大量の知識は、決して馬鹿にしたものじゃない。そのことに生涯を捧げようとする理論家が、本当に「説明がつかない」と考えていることなど、実際のところ数少ない。


いや、僕だってわかってますよ。そりゃキャッチーなタイトルつけといた方が、目を引くしページビューだって増えるよね。実際こうやって釣れてるわけだし。それに、「?」はおそらく良心の表現なのだろう。たださ、他の記事のクレジットを消費してると思うよって、そう言いたかっただけ。


で、言うまでもないことだが、「11月に買って、6月に売る」みたいな経験則を、何も考えずに未来に適用しちゃ駄目。というかここまで読んでいただいた皆様だって、そんなことわかりきってるだろう。一年の間には四季があって、我々の生活には節目があって、そのことが株価に何の影響も与えないと思う方が不自然だ。しかしながら断じて、そのことは我々の投資判断に影響を与えない。


一年にはいくつかの月が存在する。過去を眺めて、最も株価の上昇した月に買い、最も株価の下落した月に売ってみればよい。一週にはいくつかの曜日が存在する。過去を眺めて、最も株価の上昇した曜日に買い、最も株価の下落した曜日に売ってみればよい。市場に参加する全員が同じことをするとき、「過去の傾向」は消え去るだろう。当然のことだ。単にそれだけのことだ。


バックミラーだけを見て運転するなんてのは、危険極まりない。過去の傾向が続くと皆が盲目的に信じるとき、バブルや危機は増長されるだろう。