試行錯誤と需給ギャップ

明暗分かれるトヨタとホンダ、過剰生産能力が重荷に | Reuters
http://jp.reuters.com/article/mostViewedNews/idJPJAPAN-37903520090508

トヨタはホンダに比べて過剰な生産能力を抱えており、需要の回復が見込めない中で重荷になっている。固定費負担を減らすため、いずれ生産設備の統廃合に踏み切らざるをえなくなる可能性もあるが、トヨタは将来的な需要の拡大に備え、生産能力の削減には否定的だ。


最近あまり聞かなくなったが、id:equilibrista:20090408:p2でも書いた「需給ギャップ」の議論てのは要するに、こうして生産力が過剰になっているトヨタから車を買ってやれって話だ。そのことが前もって知られているとき、メーカーが採るべき戦略はひとつしかない。常に全力を挙げて、生産能力拡大のための設備投資をすることだ。売れなくなっても、政府が税金を使って買ってくれる。なのにつくらないとすれば、むしろ株主への背任になってしまう。


で、結果として巨大な工場国家が完成する。誰も使わないものをつくる工場で皆が働き、払う給料の源などほとんどない社会だ。当然のことながら、皆がジリ貧だ。馬鹿げている。常に考えるべきは、我々が何をほしいのかだ。車をほしい気がしていたが、実はそうでもなかったことが、最近わかった。この文脈では、そのことを予感していたホンダは賢かったし、トヨタは阿呆だった。それだけだ。


「人類はこれをほしがるべきだ。」


などと、はじめからほしいものが決まっているなら、計画を練るのは至極簡単だろう。しかし実際にはそうじゃない。我々は生きているし、常に明日について悩み考えている。だからこそ、これは結果論に過ぎない。実際のところ昨年は、トヨタが賢いと皆が考えていた。人類が悩み考えることの可能性と未来に期待するとき、したがって、「需給ギャップを救え」みたいな話は馬鹿だってことを、覚えておきたい。僕が明日に何がほしいかを、政府が理解しているだなんて、そんなさびしい世界であるはずがない。