濃縮果汁還元ジュース

というわけで、レバレッジとリスクについてもうちょっと書いてみる。事例でいこうかな、ちょっと辛抱して読んでみて下さい。


下記の二つの投資先を考えてみる。

  1. 新たな事業のため、100円を株式で調達する
  2. 新たな事業のため、50円を借金(2%)で、50円を株式で調達する


事業の規模は一緒だが、例えば5円の投資家にとって、2)の株式への投資はレバレッジ*1に感じられる。実際のところはどうだろうか。


調達された100円を注ぎ込んだ事業によって、共に10円の利益が生み出されたとき、1)のケースでは10円はすべて株主のもので、投資家にとっては10/100=10%の(潜在的な)リターンとなる。「潜在的な」としたのは、株式は市場価格で売却することになるから。とはいえ「利益が出た」という事実は、売却しようとする際には皆に認識されていることになる。一方で2)のケースでは、50円の2%である1円の利払いをした残りの9円が株主のもので、投資家にとっては9/50=18%の(潜在的な)リターンとなる。


では100円を注ぎ込んだ事業は利益を生み出さず、共に10円の赤字となった場合はどうか。1)のケースでは10円の赤字はすべて株主のもので、投資家にとっては-10/100=-10%の(潜在的な)リターン。2)のケースでは50円の2%である1円の利払いをし、株主の赤字は11円で、投資家にとっては-11/50=-22%の(潜在的な)リターン。


当初感じられたように2)のケースはやはりレバレッジ的で、1)のケースと比べると、資金が同じ事業に向けられていたとしても、株式の投資家にとって潜在的なリスクのプロファイルが違うように感じられる。要するに派手だ。しかし実は、両者は簡単に一致させることができる。2)のケースの投資家は、同時に同額の貸し手になればよい。こうすれば、事業が成功したとき(1+9)/(50+50)=10%、事業が失敗したとき(1-11)/(50+50)=-10%と、1)のケースと潜在的なリスクのプロファイルは一致してしまう。


要するに投資家にとっては、借金つまりレバレッジを含む事業の計画さえ明らかにされていれば、投資のリスクからそのことによる影響を排除することが出来、選別の根拠は事業の内容そのものになるのである。


騙されているように感じるかもしれない。でもこれ本当。モジリアニとミラーの仕事ってのがこれだ。レバレッジなんてものはフィルターに過ぎず、濃縮果汁還元ジュースは当たり前に普通の味がする。大切なのは果実そのものだ。もちろん濃縮と還元を分業するのだから、その具合が透明であることは必要で、ここではそのこと*2に意識が向くことが大切なのだと、僕はそう考えてる。あ、あとそれを何杯飲むか。

*1:自分が借りてるわけじゃないので「的」としてみたが、結局は同じことだ

*2:つまり情報公開だ