リスクとその評価

池田信夫氏も速攻で紹介していた*1が、経済学のフレッシュマンコースがどのように「ちょっとだけ」変わるべきか、マンキューがニューヨークタイムズに書いている。


Economic View - Freshman Economics Won’t Be Quite the Same - NYTimes.com
http://www.nytimes.com/2009/05/24/business/economy/24view.html

“If housing prices have fallen only 20 percent, why did the banks lose almost 100 percent of their money?”

The answer was leverage, the use of borrowed money to amplify gains and, in this case, losses.


で、そのうちのひとつが「レバレッジの効果」なんだそうな。それにしてもまた随分と素朴な表現をしたものだなと。もちろん、投資されている金額の大きさとリスクの大きさに直接の関係がないこと*2の導入的表現として、レバレッジは選択肢のひとつではあるのだろうが、もっと真正面から「リスク」を取り扱おうという姿勢があってよいのではないか。

Economists have yet to figure out what combination of mass delusion and perverse incentives led banks to undertake so much leverage. But there is no doubt that its effects have played a central role in the crisis and will need a more prominent place in the economics curriculum.


レバレッジの効果」は危機の中心的な役割なんてちっとも果たしていなくて、だってそれは道具に過ぎないじゃない。それよりも、その道具でつくられたリスクは、意図されたものなのか、そうでないのか、その事前の見積もりと、実際に発生した大きさはどのような関係にあったか、そこに問題の本質があるわけで。


なぜそのリスクをとろうとするのか、それをどのように評価するのか、そういう視点による探求は、もちろん決して新しいものじゃない。モジリアニとミラーの仕事からCAPM、そしてブラックとショールズによるオプションの評価は、最近こそ悪者にもされているが、もう少しだけ「まんま」経済学と近づいてもよいのではないか。僕はそう考えてる。


もちろん少しずつ、具体的に、簡潔に、ここでも書いてみたいと思う。

*1:http://blog.goo.ne.jp/ikedanobuo/e/658d200974c2f7a60958e2378e82f903

*2:例えばオフバランス取引は、文字通りバランスシートには記載されない