新型インフルエンザの市場感応性

お前はバカかと驚かれるかもしれないが、新型インフルエンザには市場感応性がある。新型インフルエンザは、CAPMの意味でのベータが正なのだ。要するに株価と連動している。説明は簡単。感染が世界中に広がって深刻な事態になるとき、生産も消費も低下が見込まれ、株価は下落しているだろう。


なので、特にこれに生活が密接に関連している、例えばメキシコに住んでいるとか、病院で働いているひとは、株式を空売りしておくことで、経済的には被害を緩和することができる。治療費の一部は、株の空売りからの利益が相殺してくれるだろう。自分全体は常に、ひとつのポートフォリオである。


CAPMとは、あらゆるリスクに対するプレミアムを決める理屈だが、それは「市場」に対する感応性で表現される。しかし実は、ここで「市場」を持ち出すのは、説明上の便宜に過ぎない。それはつまり、「すべてのリスク」のことなのだ。経済成長の行く末は、生産性や消費の嗜好の移り変わりだけでなく、感染症や大地震にも大きく左右される。


人類が自らのほしいものをつくりだそうとする努力に潜む「すべてのリスク」との関係で、あらゆるリスクは評価される。競馬のような勝手なリスクにプレミアムなど存在しないし、一方で新型インフルエンザのような深刻な社会リスクには、大きなプレミアムが存在してよいはずだ。保険の形で感染症地震のリスクを負担する場合であれ、価格はそうやって決定されるのである。