市場全体の株価収益率

"Stocks for the Long Run"*1で有名な、個人的にはむしろ為替にかかるパラドックスで気になるシーゲル*2が、S&P500インデックス*3の株価収益率に妙なクレームをつけていると、マンキュー*4id:ryozo18:20090410、id:himaginary:20090410、等で見かけたのだが、シラー*5まで参戦して与太話を展開している。

The value of a firm's equity can be viewed as an option on the total value of the firm, after the bondholders and other claimants have been paid. It is a fundamental theorem of option theory that the sum of the option prices on individual firms is worth more than a single option on the value of all the firms.


ここでの彼らの理屈はこうだ。株主は出資した金額以上に損失を被ることはないのだから、株式というのは実はオプションなのだと。で、それぞれの「株式にかかるオプション」の合計は、「株式の合計」にかかるオプションよりも価値があるのだと。


いやさ、そりゃそこだけ見れば、その通りだよ。でもさ、そもそものところを、市場ポートフォリオの近似としての株式インデックスの存在意義を、よく考えてごらんよ。株主は出資した金額以上に損失を被ることはない。じゃ、その損失はどこへ行ったんだ?って話。消えるはずないんだよ、そんなもの。昨今毎日ニュース見ていれば嫌ほど骨身に染みてるはずだと思うんだけど、結局税金が負担してるじゃねーか!


というわけで、大きな会社の利益だろうが小さい会社の利益だろうが単に全部足してしまうのは、市場ポートフォリオの近似としてのS&P500インデックスにとって、まったく正しい。どうしようもなく正しい。一分の隙もない。世の中への影響とか、世の中からの影響とか、そういう本質的なことを考えずに、目をつぶってエイと株を買ったときのPERが知りたいのなら、単に全銘柄のそれを平均しておけばよい。実に簡単な話だ。いやむしろ、買おうと思ってる株のPERを見ればいいでしょ。普通に。