ETF転換権付き政府保証債の馬鹿さ加減

市場活性化策、3月期末にらむ 証券界から相次ぎ提言
http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20090315AT2C1300I13032009.html


あまりにも馬鹿馬鹿しいので先日は端折ってしまった*1が、まだこんなものを真剣に提言している連中がいるらしいので、解説しておきたい。「株価が上がったらETFと交換できて、しかも元本が保証されてる」債券の発行だ。結論から言えば、こいつは要するに、ETFにかかるオプションと通常の国債との抱き合わせ販売なのだが、それをいくらで売るのかで、問題の所在は変わってくる。しかし、いずれにせよ大馬鹿であることに違いない。


殺到する投資家の需要に応じて入札で価格を決めるのなら、大雑把に言えば、それは通常の国債にオプション料を上乗せしたくらいの価格になるだろう。もちろん償還される額面よりも高く買うのだから、ちっとも「元本保証」にはならない。国債の発行に加えて、政府が「オプションを投資家に売った」というだけの話だ。当然のことだが、需要と供給が釣り合う価格で取引されるとき、オプションの買い手にも売り手にも特段の損得は発生しない。後に残るのは結果としての勝ち負けのみである。オプションなど買いたい者と売りたい者が勝手に市場で交換すればよいのだから、よりシンプルに国債を発行してETFを買う方が、わかりやすい分だけずっとマシだ。


もしこの債券を額面で販売するというのなら、要するにこれはオプション料をタダで貰えるのと同じことなので、投資家は殺到し購入は抽選にならざるを得ないだろう。次の瞬間に市場でまるごと売り払えばオプション料はすぐに手に入るし、仮に譲渡制限が付けられても、適当に株式先物を売ってヘッジすれば結局は同じことだ。あらためて強調するまでもないが、こんなものは定額給付金のクジ引きをするようなもので、不公平極まりない。まさに論外である。


じゃ無限に発行すりゃいいじゃないかと思うかもしれないが、そりゃ定額給付金を無限に配るのと同じで、さらに意味がわからない。だって財源は税金なんだぜ?金額の上限を決めずに所得再分配をするなら、資金を引き上げられる方は、すぐに死んでしまう。すべての国民が、そこら中からお金をかき集めてきて全力でこれを買う必要があるのだ。単に自分を守るために。そんな馬鹿な国に、住みたいと思いますか?


「マシ」とは書いたものの、政府が債券を発行して株を買うことにも、もちろん賛成できない。株が下がったら自動的にトリプル安だぜ?銀行がいま死んでいるのは、要するに株を持っていたからだ。何が政府の役割なのか、よく考えてみてほしい。