借金の値段

米国でも日本でも、国債が買われたり売られてたりしている*1が、長期金利は下がったり上がったりしているが、要するに、借金の値段は日々変わっている。その意味*2を、あらためて考えてみたい。あらゆる借金の値段は、大きく分けて2つのコンポーネントから成る。時間の値段と、リスクの値段だ。


(1) 借金の値段 = 時間の値段 + リスクの値段


時間の値段が高いとき、借金の値段は高い。要するに、お金を借りたら、すこし多めに返す必要がある。そのとき時間は貴重だからだ。これを「無リスク金利」とも呼ぶ。リスクの値段が高いとき、借金の値段は高い。要するに、お金を借りたら、すこし多めに返す必要がある。皆がリスクを嫌がっているからだ。これを「リスクプレミアム」とも呼ぶ。一般には、時間は皆に共通で、リスクはその借金に固有だが、しかしながら最近の市場では、そのどちらかよくわからないようなアイテムがテーマになっている。政府のリスクや、中銀のリスクだ。そのどちらも、多くの借金の値段に共通していて、我々のチャレンジに深刻な影響を及ぼす連中である。


(2) リスクの値段 = 政府のリスクの値段 + 固有のリスクの値段


さて、我々の借金のリスクは、政府のリスクに上乗せされることになっている。理由はシンプルで、政府はお金に困ったとき、我々から税金を取れるからだ。つまり、放漫財政が心配を引き起こすとき、そのことと無縁ではいられない我々の借金の値段も、同時に高くなってしまう。


(3) 時間の値段 = 時間の価値 + 中銀のリスクの値段


時間の値段は、その価値のみを表現しているわけではない。そう、インフレって奴だ。我々は、ほとんどの*3ものの価値を紙幣で計るが、時間もその例外でない。その価値に値段をつけようとすれば、自動的に、中銀のリスクが上乗せされてしまう。


(4) 借金の値段 = (時間の価値 + 中銀のリスクの値段) + (政府のリスクの値段 + 固有のリスクの値段)


すべてをまとめてみたが、何か見えてくる*4だろうか。もちろん、より深く階層を掘り下げたり、また別の括りを考えてみることだって可能だ。さて、ここで問題です。


【問1】政府と中銀とは、「独立性」というお題目でリスクが分離されているが、上式と照らし合わせて、また必要に応じて補足し、その理由を説明せよ。
【問2】中銀が政府のリスクを飲み込むとき、借金の値段と、そこから中銀のリスクの値段を差し引いた「借金の価値」の変化について考察せよ。


考えてみると、問1と問2は全く同じ内容だ。借金の値段は、我々の経済の活動にとって、何よりも大事なもののひとつだが、その構造は残念ながら、広く一般に理解されているとは言い難い。財務省も日銀も、学者も記者も、その値段の変化については、モゴモゴと奥歯*5に物でも挟まったような説明を並べるが、何を言っているか明快なものなど見たことがない。今日の説明が、ほんのすこしでも新しい光になればいいなと、この冷えた日に思う。

*1:http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90900001&sid=aoQspCCnbiI8

*2:id:equilibrista:20090612

*3:【問3】例外を挙げよ

*4:特に右辺第一項と第二項の違いに気をつけたい

*5:私事で恐縮ですが、昨日親不知を抜きました