後ろ向きに出口へ

好景気になって、異次元の金融緩和からの出口で、日銀が債務超過に陥るみたいな財務論が、にわかに流行ってきて嬉しいわけだが、当ブログが継続して書いてきているテーマのひとつなわけだが、誰が何を言おうと誰もピンとこない振り返っても過去に例のない話は、いつだってエキサイティングだ。なので今日も、なるべく具体的に書きたい。


好景気になって、日銀が兆円単位の債務超過に陥り、国庫に納付できないばかりか、税金による補填が必要になる。つまり兆円単位のカネがかかるとしよう。別にいいじゃないか。好景気なら、兆円単位の税収増があっても、ちっともおかしくない。そのくらい痛くも痒くもない。ただ待て。後になって痛くも痒くもない程度のアクションで、世界は劇的に変わるだろうか。その程度の話に、僕らは四半世紀も費やしてきたのか。


好景気になって、日銀が十兆円単位の債務超過に陥り、国庫に納付できないばかりか、税金による補填が必要になる。つまり十兆円単位のカネがかかるとしよう。これは微妙だ。十兆円でも前半なら、なんとかなる場合もあるかもしれないが、その後半あるいは百兆円単位のカネがかかるとなれば、どうしたって大惨事である。ただ待て。後になって大惨事になるようなアクションで、好景気は訪れるだろうか。僕らは未来を読みはしないか。


というわけで、そもそも出口「戦略」なんて能動的なモノには、どうしたってなり得ない。カッコウつけてるのがコッケイなくらいだ。よし、ならば、日銀が出口へと追い込まれる姿を、改めて具体的に考えてみよう。最も極端に、わかりやすさのために、異次元に買い付けたのは百兆円単位の株だとしよう。そして何らかのきっかけで、例えば利上げや、あるいは外国の経済危機で、それらが十兆円単位で下落した。


マズいぜコレ。現在でさえ黒田総裁が頻繁に呼ばれる国会で、怒号と紛糾の様子が見えてこないか。あるいは新聞テレビ週刊誌に至るまで、叩きまくる太鼓の響きが聴こえてこないか。「あくまでも物価安定のために」みたいな弱い防御シールドなんて、笑いのネタにさえならない。そもそも物価が安定しているかさえ怪しい。そうした状況下で、日銀は株を持ち続けることができるだろうか。まだ下がるかもしれないのに。無理だろそんなの、誰のカネだよ。損切りしろ。そういう話に、どうしたってなるじゃないか。


さて仮定を緩めよう。日銀の抱える資産は、全部が株ではなく、REIT国債も含んで、ややマイルドだ。あるいは売られたのは、株じゃなくて国債だった。下落の幅も、相対的には小さい。もちろんご察しのとおり、状況は質的には変わらない。マイルドになるだけだ。つまり出口へと転がり落とされるポテンシャルの坂道は、単にリスク資産の棄損によって描かれる。怒号は損失に比例する、よく見る光景だ。


ここのところFRBでは、急にバランスシートの議論が目立ち始めた。理由は言うまでもない。すこしずつ利上げ*1を始めてみたら、こうした状況が一部、視野に入ってきたからだ。