日露戦争、資金調達の戦い

よく考えてみるまでもなく、沢山の人が従事し、沢山の物資を投じる戦争には金がかかる。しばしば精神や人事のみで語られがちな歴史を、その資金調達側から描いた稀有な本は、しっかりと確認しながら読みたいのに、つい面白いので先を急いでしまう。


日露戦争、資金調達の戦い―高橋是清と欧米バンカーたち (新潮選書)

日露戦争、資金調達の戦い―高橋是清と欧米バンカーたち (新潮選書)


おそらく実際に一次史料から振り返ろうとすれば、その全体像を把握するには、膨大な時間と知見が必要なはずだと思うのだが、意図されたかどうかにかかわらず、一線の現場で活躍される著者 [twitter:@Porcobuta] が、モダンな金融の視点を持ちつつ串刺したそれは、資金調達の教材としても実に素晴らしい。資本市場と情報技術、そしてコミュニケーションは、この100年で劇的な進化を遂げたが、しかし資金調達の基本は、当然のことだが全く変わらない。金を出してもらうこと、リスクを負担してもらうことだ。そうした対比を感じながら、なので若い人も是非手に取って、これからのチャレンジと重ねながら、読まれてみてはどうかと思った。

資産 負債
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軍 |国債


蛇足だが、しかし自分の道具*1から見たとき、強く感じざるを得ないのは、夢見がちな子供のようだが、調達した資金が投じられた先の軍は、将来に何かを生み出すところの資産ではなく、単に他国を破壊する矛盾だ。とはいえそうした、25世紀の視点からは理解できないアクションは、ゆっくりとではあるものの減りつつある。事故が起きた原子力発電所がつくられた頃の冷戦は、既にその姿を変えてしまった。我々は、我々が望むものから逃げることはできない。