金利は誰が決めるのか
昨日のFOMCでは、少なくとも2014年の終盤まで、短期金利の誘導目標を「異例の低い水準」に据え置くとの声明*1が発表された。いわゆる時間軸政策だが、しかしながら一方で、最近公表されるようになった参加者による金利見通し*2が奇妙なのは、現在と同じ0.25%の水準を2014年末に予測する委員は、17名のうち4名しかいない。下に抜粋した図を見ていただけると、トーテムポールのような「予測」の分布が確認できる。他には0.5%が3名、1.0%が2名、1.5%が1名、2.0%が2名、2.25%が1名、2.5%が3名、2.75%が1名である。どういうことだろう。FRBは、一体いつから利上げを始めるのだろうか。
ちょっとタカ派な「予測」をしてみたものの、まとめる際には日和ったんじゃないかとか、あるいは参加者の中でも、投票権のある10名が偶然にも緩和的だったとか、細かな憶測は横に置いても、バーナンキによれば、参加者による金利見通しは委員会プロセスへのインプットであって、コンセンサスはガイダンスの方にあるそうだ。まあいい。複数人で何らかのプロジェクトを進めたことのある者なら誰でも知っていることだが、全員一致の見解なんて、いつだってロクなことがない。
しかしこのバラツキは、根源的には、どこからやってくるのだろうか。なぜ将来の金利は、分布を持つのだろうか。ひとつのヒントは [twitter:@gion_mkt] さんも解説されている*3ように、テイラールールだろう。要するに理屈上の短期金利みたいなものだが、こいつを構成する将来の物価やGDP成長率、失業率なんてのは、100人いれば100の見通しがあるのが普通だ。だとすれば、将来に渡る金利の経路が人の数だけ存在することは極めて自然だろう。ただ、そう考えてみるとしかし、現在のインフレ予想やGDPギャップ*4についても、100人いれば100の見方があるのが普通である。だとすれば、現在のある「べき」短期金利の水準も、人の数だけ存在するのが自然ということにはならないだろうか。
なるよね普通に。もっと言えば、僕らが日常的に取引する、例えばパンの価格も、現在のある「べき」水準は人の数だけ存在している。商店街のそれが高めに見えるなら、パン屋ビジネスに参入したくなるし、商店街のそれが安く見えるなら、米を炊いていた朝食の何日かはパンに切り替えたくなる。そうして皆が、高い安いを綱引きする中で、商店街でのパンの価格と、仕事や食費の配分は決まっていくわけだ。パン価格の決定委員会のようなものは存在しない。誰も「正解」を知らないからだ。だとすれば金利も、同じようには決まらないだろうか。
決まるよね普通に。それが高めに見えるなら、他の資産、例えば株式や債券をすこしだけ売って預金にしたくなるし、それが安く見えるなら、すこしだけ借金して商売のチャレンジがしたくなる。短期金利の決定委員会など存在しなくても、そうして皆が高い安いを綱引きする中で、資金の貸し借り*5の値段と、購買力の配分は勝手に決まるだろう。需要と供給が決める金利はひとつしかない*6が、そういう値段が僕は好きだ。インチキが難しいからだ。