ファットテール幻想

equilibrista2009-03-07

「株式のリターンは正規分布していない」ことが大好きなひとたちがいる。これまで関連分野でされてきた仕事の多くが無力だと、嬉しそうにルンルン吹くのが彼らの特徴だ。


細かい面倒は省いて結果だけ書いておくが、そりゃ理屈にも投資行動にも、実際のところほとんど影響を与えない。大きな価格の変動には「心の準備が要るよね」くらいの話だ。


例えば当然のことだが、株式オプションの価格は需要と供給で決まる。原資産の振る舞いにベキ分布が期待されているのなら、そのことは既に価格に反映されている。ブラックとショールズの枠組みは、シンプルで標準的な物差しを与えているに過ぎない。


リスク資産のポートフォリオは一般に、株式を一銘柄だけ持つのに比べて、我々が「避けたい」と思うようなリスクを減少させ、投資の効率を向上させる。それぞれにベキ分布が期待されていたとしても、このことに何ら変わりない。一般的な安定分布を仮定しても、マーコヴィッツの枠組みは、そのまま利用できる。


リスク資産に要求されるプレミアムには、当然のことながら大きなテールリスクも考慮されている。そんな極端な出来事が起こり得るリスクを負担する分の見返りは、既に価格に反映されているのだ。


そもそも、正規分布に従ってリスク資産の価格が変化する合理的理由など、どうしたって見つからない。それはちっとも新しい発見ではなく、既に皆よく知っていることなのだが、「100年に一度なんです」とか言う方が単にウケがいいって話だ。