銀行の株価パズル

ちっともパズルじゃないという指摘もあろうかと思うのだが、よく考えてみると銀行の株価はよくわからない。例えば乱暴に、あるいは未来の一つの姿として、BSの左側は全部債券で、右側は短い借金と株式と思うとき、要するに債券ファンドだと捉えれば株価はざっくり純資産と近くてもよさそうだが、両者に大きな乖離がある金融機関は少なくない。もちろん我が国の銀行を見渡せば、その多くは株価は下方に沈んでおり、また諸外国を含めて見渡せば、大きく上方に株価が乖離した「割高な」金融機関も見かけることがある。


おそらく個々の融資は、さまざまな理由で、さまざまに金利が付いているのだろう。例えば誰もが手を出しにくい、しかし返済を期待できる借り手を新たに開拓できる金融機関は、リスクの対価に加えて、そうした開拓のプレミアムを金利から得ることができるだろう。また例えば極端な競争環境下にあり、また風変わりな役所の指導があって、お前は既に死んでいる的な借り手にもLove注入を続けざるを得ないような金融機関は、失なわれるカネが株価に表現されざるを得ないだろう。


個々の融資に見られる変わった金利は、そう思うと、未来に向かって裁定チャンスにも見えてくる。時間の対価とリスクの対価と、その変わった金利との差分について見比べたくなってくる。時に参入したくなってくる。グラスを片手に、個別の銀行について語るときには大いに楽しめた話も、こうしてまとめてみると、いかにも当然な、何も言っていない同語反復先輩になってしまった。だから理屈は冷たくて好きだ。