追加緩和雑感

正直あまり筆が進まない、いやキーボードが心地よく鳴らないわけだが、これだけ中銀関連の記事を書いておきながら、昨日の日銀について触れないわけにはいかないのだろう。しかし「理解」を「目途」や「ゴール」と言い換えてみたところで、アクションによって結果が変わらなければ普通に意味がないわけで、怒られて「頑張ります」を「死ぬ気で頑張ります」に言い換えるのは、オトナなら誰でも知っていることだが、典型的な駄目シグナルだぞ。


で、何するのかと思ったら「基金」を増額して65兆円って、お前な、日銀券の残高が80兆円だってのに、これで特別枠を名乗る意味あるのかと。そもそも財政への懸念から、長期金利の上昇不安から、増税を余儀なくされつつある状況下で長期債買って、リスクプレミアムを押し潰すのが目的ですって、でも(僕はそう思ってないから)財政ファイナンスじゃありませんって、それ典型的な財政ファイナンスだろ、常識的に考えて。だいたい政府や外野が騒ぐからアクションを変えるって、独立性の意味を理解してるの?「全員一致」って、人数揃える意味あるの?


冷たい雨を浴びる中で、全身から力が抜けていくのを感じながら、結局のところ白川総裁にしろ、あるいはバーナンキ議長にしろ、政策マニアや研究者として名を馳せても、強い信念とリーダーシップを持たなきゃ、ロクな仕事などできるはずもないと感じざるを得なかったのは、それでも次々とニュースが押し流されてくるツイッターのタイムラインから、戦うボルカー御大の記事が流れてきたからだ。他国の政府中銀も含む、すべての金融機関を敵に回して、ほとんど理解されているとは思えない、しかし彼の中を貫く正義を押し通そうとする鉄人が、80年代初頭には苦しんでいた米国を救った。そして彼はいま再び、こんどは納税者とプレイヤーのフェアなルールを探っている。最初の表明の際には、誰もが実現を疑ったボルカールールの英断は、ほんのすこしだけ未来を素敵に変えるだろう。


なあ、日銀の次期総裁は、ボルカー御大にお願いしないか。